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ドクターDの健康コラム 21

2017.03.16

 

3月18日は「春の睡眠の日」

 

日本睡眠学会と精神・神経科学振興財団が設立した睡眠健康推進機構が、

睡眠と健康への意識を高めることを目的に制定した日です。

(睡眠健康推進機構のサイトによると、この日は欧米ではWorld Sleep Dayだそうです)

 

良質な睡眠をとることは健康のためにも必須条件です。

日本人の平均の睡眠時間は男女共に減少傾向にあります。

国によって定められた、健康日本21という

「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」でも、

対策をとるべき9分野(栄養・食生活、身体活動と運動、休養・こころの健康づくり、

たばこ、アルコール、歯の健康、糖尿病、循環器病、がん)の中に、

「休養」として盛り込まれています。

 

良い睡眠を意識している人は少ないと思います。

またどのように努力すれば良い睡眠を得られるのか分からない人も多いと思います。

そこで睡眠と健康に関する啓蒙が必要なのです。

 

不定期に各地で実施している健康講座では睡眠に関するアンケートを実施しています。

拝見しますと、良い睡眠を得るための条件を満たしている方が多いです。

健康に興味がある方は意識的に、または無意識的に

良い睡眠のために必要な生活習慣を身に付けているということでしょうか。

(最近実施した地域の集会所でのひとコマ。

健康寿命を延ばすためにできることとして、運動、食事、睡眠についての講演を行っています)

 

どのような生活習慣が必要なのか、興味がある方は過去の記事をご覧ください。

睡眠コラム1~3

 

ドクターDの健康コラム 16

ドクターDの健康コラム 17

ドクターDの健康コラム 18

 

 

さて、今回は過去のコラムでふれていないことをひとつ。

睡眠と体温についてです。

 

一晩の睡眠と体温の変化を観察した実験結果によると

眠りにつく4時間も前の夕方から指先から徐々に体温が上がり

高温になったところで体温が下がっていきます。

この時に睡眠に入ります。

その後も体温は下がり続け、目覚めの2~3時間前に最低値となり

やがて上昇しながら覚醒(起床)の準備を始めます。

目覚めのころは活動のための体温に戻っています。

(出典:一般社団法人日本睡眠教育機構発行 睡眠学入門ハンドブック)

 

従って、冷たい手足のままでは眠りに入れなくなります。

手先や足先の体温が上昇することで熱を放散し体温を下げ、

スムーズに眠りに入りやすくなるからです。

入浴などでしっかり体、手足を温めて布団に入るようにしましょう。

また、体温が下がるようスムーズに熱が体から放散されるように、

熱を吸収し外へ逃がしてくれる寝具が気持ちよく眠れるのも

言うまでもありません。

 

 

健康コラム執筆担当:中嶋大渡 博士(人間科学・早稲田大学)

 

 

ドクターDの健康コラム 20

2017.02.10

 

冬場の経口補水飲料について

 

我々の体温調節には、体内の水分量が大いに関わっています。

水分が不足して体温調節ができなくなった状態をいわゆる脱水症といい、

夏場に普段から水分が不足気味の高齢の方が、何らかの理由

(例えば冷房の効いていない室内で知らず知らずのうちに過度の発汗を起こすなど)で

水分不足になることで、屋内でも脱水症を起こすことが問題になっています。

 

 

夏に限らず冬でも、入浴での発汗、睡眠中の発汗が起こります。

そこで厚生労働省後援の「健康のため水を飲もう」推進委員会では

季節に限らず、そして喉の渇きに関わらず

「あと2杯、水を飲みましょう」と提唱しています。

この2杯とは入浴後と起床時です。

 

 

夏場には経口補水液というものをCMなどで目にしたと思います。

これは身体から失われた水分と電解質を経口的に補う飲料で、

その特徴は点滴と近い組成であるということ。

つまり身体が失った水分を補う最適な飲料であり、

かつ吸収されやすい配合だということです。

 

高齢の方は夜中に何度もトイレに行かないよう

寝る前の水分摂取を控える傾向にありますが、

経口補水液は通常の水分摂取よりも頻尿になりにくいので、

就寝前でも安心して飲んでいただけます。

 

 

体内の水が常に枯渇しないように心がけることは

生命活動を適切に維持するための基本です。

冬でも、喉が渇かなくても、定期的な水分摂取を心がけてください。

 

 

 

健康コラム執筆担当:中嶋大渡 博士(人間科学・早稲田大学)

 

 

 

ドクターDの健康コラム 19

2017.01.27

 

入浴の話

 

寒い季節の温かいお風呂は気持ちいいですね。

しかし一方でこの時期のお風呂には気をつけるべきこともあります。

 

 

ついつい熱めのお風呂にじっくり長めにつかってしまうケースがあります。

発汗量も増えてしまいますし(中高年・シニアの方は脱水に注意)、

温まりすぎると入浴後身体が興奮し入眠の妨げになります。

お湯の温度は40℃までにするなど注意し、

就寝は入浴後2時間程度時間をあけた方が睡眠に適した体温になります。

また、食後すぐの入浴は消化不良を起こす可能性がありますので

食後の場合は少し時間をおいて入浴しましょう。

 

入浴剤もお好みでお試しください。

身体を温める有効成分の入った医薬部外品の入浴剤でじんわり温まりましょう。

お湯から立ち昇るよい香りと、白濁したお湯ならその見た目もあいまって

気持ちが安らぎます。

お風呂につかると浮力のおかげで筋肉を使わなくてすむことにより

リラックス効果もあるようです。

 

お湯の温度を40℃程度に設定すると同時に

脱衣室や浴室を暖めておくことで温度差を減らし、

急激な温度変化を和らげることができます。

心筋梗塞や脳梗塞などを起こす、いわゆるヒートショックを

防ぐことができます。

 

入浴中に失われた水分を補うためにも、

入浴前後で水分を飲むとよいといわれます。

このときに水やお茶よりもお勧めなのが経口補水飲料です。

 

次回は冬場の経口補水飲料についてです。

 

 

健康コラム執筆担当:中嶋大渡 博士(人間科学・早稲田大学)

 

 

 

ドクターDの健康コラム 18

2017.01.12

 

睡眠の科学 その3

睡眠の質を変えるために

 

 

眠りは二つの仕組みで制御されています。

 

ひとつは“体内時計機構”といって、

朝になったら目が覚める、夜になったら眠くなる、という身体のリズムです。

もうひとつが“恒常性維持機構”。

疲れたら眠くなる、つまり、身体を常に良い状態に保とうとする働きです。

 

この当たり前の仕組みを忘れて、知らない内に眠りの邪魔をしている人が

少なくありません。

 

邪魔をせずに身体のリズムを後押しする。すなわち、

朝には体内時計を合わせる強力な要素である「朝の日光」、

これを利用して身体を朝のスタート時間に合わせ、

そこから大体14~16時間後に体内時計の働きで自然に眠くなる、という

仕組みを働かせます。

そして夜になれば脳も長時間稼動しているので、

砂時計の砂が下にたまるように、適度に“疲れ”がたまって眠くなります。

 

他には、

朝ご飯をしっかり食べる、昼寝は短めに切り上げる、寝る前に強い光を見ない、など、

身体のリズムに合わせたメリハリのある生活を送ることが、

シンプルかつ正しく睡眠の質を変える方法です。

 

必要な睡眠時間に決まりはありません。睡眠時間は人それぞれ。

大切なのは、昼間眠たくならずに元気に過ごせているか、ということ。

まずは自分に必要な睡眠時間を知り、そして毎日必要な量眠る。

それが健康で長生きするために必要なことなのです。

 

 

健康コラム執筆担当:中嶋大渡 博士(人間科学・早稲田大学)

 

 

 

ドクターDの健康コラム 17

2016.12.29

 

睡眠の科学 その2

寝ている間に起こっていること

 

 

眠りには、脳を活動させる「レム睡眠」と、

脳を休ませる「ノンレム睡眠」の二種類があります。

 

レムとは、REM(Rapid Eye Movement:急速眼球運動)の略。

難しい話は省略しますが、

まるで覚醒時(起きている時)のような脳波を示す

特殊な眠りを「レム睡眠」と呼びます。

一方、脳の働きをしずめて休ませる眠りが「ノンレム睡眠」です。

 

寝ている間に身体を成長させ修復する成長ホルモンは、

寝入りばなの深いノンレム睡眠時に集中して分泌されます。

 

脳はまずノンレム睡眠を行い、その後短いレム睡眠があり、

再びノンレム睡眠に戻り、短いレム睡眠になるサイクルを

一晩で3~4回繰り返します。

1サイクルは約1時間半。

 

胎児・乳児はこのレム睡眠が非常に長く、成長とともに減っていきます。

レム睡眠によって脳が活動し、作られていきます。

そしてある程度脳ができると、レム睡眠によって記憶が整理され定着します。

それだけでなく、自由な発想で物事を考えたり解決したりもします。

夢を見るのもレム睡眠の時です。

脳を活性化させるこのレム睡眠は、十分な睡眠時間がとれている人なら

明け方に多く出現するようになります。

 

こういった眠りの仕組みが分かっていれば、

寝ている間に効率よく体と脳を休ませ、活性化させ、

眠りを無駄にするという事はありませんね!

 

このように眠りには種類と役割があって、複雑で多様です。

未だ解明されていないことも多く、

現在も世界の多くの研究者の興味をとらえて離さない研究課題の一つなのです。

 

 

※その3に続く

 

健康コラム執筆担当:中嶋大渡 博士(人間科学・早稲田大学)

 

 

 

ドクターDの健康コラム 16

2016.12.15

 

毎日の生活に欠かすことのできない睡眠。

その睡眠の質によって、健康状態が大きく左右されることはご存じでしょうか。

より良い睡眠をとって健康な毎日を過ごしていただくために。

上級睡眠健康指導士でもあるドクターDより、「睡眠の科学」と題して、

睡眠の大切さを3回にわたってお伝えします。

 

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睡眠の科学 その1

眠りは何のためにあるのか

 

地球上に眠らない高等動物はいないそうです。

眠らずに泳ぎ続けると思われていたマグロも、ほんの数秒だけ眠るそうです。

そして、その脳のサイズはほんのビー玉大。

どうやら脳のサイズ・複雑さと、眠りの長さ・深さには関連があるようです。

 

眠りは何のためにあるのでしょうか。

眠りとは、“脳による脳の管理機構”と考えられています。

我々の生命活動維持のために、緻密かつ繊細な仕事をしている脳。

この脳をしっかり休ませて、明日の準備をしっかりする、

これがまず眠りの第一の役割。

しかしこの脳を休ませる事だけが眠りの役割ではないのです。

覚醒させたり、成長させたり、修復したり、記憶を整理し定着させたり・・・

様々な仕事をしているのが睡眠です。

 

枕元のメモ帳が、寝起きに書き留めるひらめきのアイデアでどんどん埋まっていく。

または、寝る前に考えていたことが朝起きたらすっきり解決!

そんな人は寝ている間にしっかり脳を働かせられている、

つまり、良い眠りが出来ている人かもしれません。

 

 

※その2に続く

 

健康コラム執筆担当:中嶋大渡 博士(人間科学・早稲田大学)

 

 

月の友ドクターDの健康コラム 15

2015.12.03

 

血管年齢は調べることができるか?!

 

 

「加速度脈波」に関する論文を読みました。

 

佐野裕司、杉下知子、片岡幸雄
ウォーキングが中高年高血圧者の血圧と加速度脈波におよぼす影響
家族看護学研究 2(1) p28-35 1996

西村千尋

加速度脈波による継続的なトレーニングの評価
長崎県立大学論集 37(1)p103-113 2003

 

 

「加速度脈波」とは、

指先に赤外線を照射することで毛細血管の血液量の変化を見て、

それを測定器の中で分析し、どのくらいの老化度(血管年齢)かを

算出する方法のことです。

 

「血管年齢の測定」というと大変魅力的で、

もし測れるなら測ってみたい、 という方は多いのではないでしょうか。

 

この「加速度脈波」は、

末梢血管(指先の血管)の硬さ、しなやかさ(血流に対する反応性)を

皮膚表面から、比較的短時間で苦痛もなく調べられる方法で、

例えば、指先の血流が良くない為に指先が冷たい人(いわゆる冷え性)では

結果が出なかったり悪い結果が出たりします。

 

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このように簡単に血流の情報が得られるので、研究も多くされていて、

加速度脈波と病気との関係や運動、そして実年齢との関係などの論文も

多く発表されているようです。

研究者によってこれまでにたくさん蓄積されてきた測定結果によって、

この加速度脈波と年齢の関係で、

「どの年代ではどのパターンが多い」というデータをもとに、

実年齢に比べて血管の状態が若いか老化しているか、

測定結果から推定できるというわけです。

この結果は運動療法で改善することも上記研究からわかっているので、

血管の硬さに対して運動に限らず何らかの改善につながることをすれば、

その結果が加速度脈波に反映される(つまり血管が若返る)ことも期待できます。

 

つまり、

良質な日常生活(栄養、運動、心、睡眠)の維持に努める、ということです。

日本人の死因のワースト3に入る脳血管疾患、心臓血管疾患。

突然襲ってくるこの病気に立ち向かうために、

普段から血流と血管を良い状態にするべく努める。

血管の材料となる良質なたんぱく質とビタミンCの摂取。

運動と食事によるカロリーコントロールとメタボ予防。

リラックスして活性酸素(動脈硬化の原因にもなる)の発生を極力減らす。

良い睡眠で心身の疲れを癒し、血管と心臓を休める、などなど。

 

加速度脈波の測定はなかなか特別なチャンスでもないと測定できないと思いますが、

身近に測れる「血圧」なども、自分の“血管の状態”を知る目安になるものなので

有効に活用したいですね。

 

ちょっとした努力で実行できる日常生活の改善で、

若々しい血管を目指しましょう。

 

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月の友のドクターDの健康コラム 14

2015.11.24

 

あなたの腸年齢をチェックしてみましょう

 

腸内細菌の研究者で理化学研究所の研究員、

辨野 義己(べんの よしみ)先生の

著書を二冊まとめて読みました。

 

『大便通 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌』(幻冬舎新書)

『腸をダマせば身体はよくなる 』(SB新書)

 

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本の中にも出てくるのですが、辨野先生は

大学院生時代に理化学研究所で光岡知足先生に出会い、

「ヒトの大腸がん発症に関与する腸内細菌の探索研究」

をテーマに与えられ、

健康と腸内細菌の研究を始められたとのことです。

 

辨野先生が作られた有名な腸年齢チェッカーが

この本に載っていましたので転載させていただきます。

 

まず以下の質問の内いくつあてはまるか、チェックしてみましょう。

 

【その1:生活習慣編】

トイレの時間は決まっていない

タバコをよく吸う

肌荒れや吹き出物が悩みのたね

運動不足が気になる

オナラが臭い、臭いと言われる

顔色が悪く、老けて見える

ストレスをいつも感じる

寝つきが悪く、寝不足

 

【その2:食事編】

朝食は食べないことが多い

朝食はいつも忙しい

食事の時間は気にしていない

外食は週4回以上

野菜不足だと感じる

肉が大好き

牛乳や乳製品が苦手だ

いつもアルコールを多飲する

 

【その3:トイレ編】

息まないと便が出ないことが多い

排便後も便が残っている気がする

便が硬くて出にくい

コロコロした便が出る

ときどき便がゆるくなる

便の色が黒っぽい

出た便が便器の底に沈みがち

便が臭い、臭いと言われる

 

 

さて、結果はどうでしたでしょうか。

 

3個以下

腸年齢=実年齢

理想的な腸年齢です。今の生活を続けてください。

ただし、油断は禁物。腸内環境は、ちょっとしたストレスにも影響されます。

 

4~9個

腸年齢=実年齢+10歳

まずまずの腸年齢です。

これ以上高くならないよう、腸内環境の改善を心がけてください。

 

10~14個

腸年齢=実年齢+20歳

老化が進行し、腸内環境に危険信号が出ています。

今すぐ腸内環境の改善を実行してください。

 

15個以上

腸年齢=実年齢+30歳

腸内環境は、すでに高齢者です。

腸内環境の改善に努めないと、がんや生活習慣病などの病気にかかる危険性があります。

 

 

それぞれの質問がそのまま快腸のためのアドバイスになっていますね。

 

例えばトイレの時間が決まっていないのは、

腸内細菌バランスが悪いのか、

排便に大切なリラックスが足りないのか、

朝の規則正しい排便のための朝食をとっていないのか、

便の重要な成分である食物繊維が不足しているのか、・・・

色々と改善点はありそうです。

 

この腸年齢チェックを期間をおいて行い、

毎回1つずつでもチェック項目を減らすべく生活改善に努めれば

きっと健康レベルが上がること間違いなしです。

 

ぜひぜひ実践してみてください。

 

 

月の友のドクターDの健康コラム 13

2015.07.10

 

腸内フローラと健康

 

少し前に腸内フローラをテレビで特集していました。
録っていたビデオを改めて見ましたが、 見た方は

「たかがお腹の調子だと思ったが、こんなにも全身の健康に関連するのか」と
目からウロコが落ちる内容だったと思います。

 

腸内フローラとは大腸の壁についている腸内細菌群のことです。

ビフィズス菌が母乳で育てられた赤ちゃんの糞便から発見されたのは1899年。

(腸内細菌の多くが発見されたのは1600年代)

 

それだけ歴史のある腸内フローラ研究ですが、

それがこの5,6年で遺伝子解析の技術が進歩し、

何倍も低コストで何倍も早く 腸内細菌の全体像がわかるようになり

研究が進んだといいます。

肥満や2型糖尿病については、腸内フローラとの関係性が

相次いで報告されているようですし、 その他にも

多くの病気と腸内フローラの関係が見つかっているということで、

お腹の調子を良くすることがいかに健康に貢献するか、

これからますます明らかになりそうです。

 

そもそも腸は「内なる外」と言われ、体内でありながら

常に直接外界からの侵入物(食べた物やウィルス細菌など)に接している場所です。

それだけに、病原体の侵入口でもあることから、

腸管免疫という身体を守る仕組みが整っています。

 

そのように病原体(細菌)を排除するしくみを備えている一方で、

腸内細菌に対しては共に生きる環境を作っているわけです。
非常に複雑な仕組みであるといえます。

 

 

腸内細菌に関する研究学会には、今から 34年前の

昭和56年に発足した腸内細菌学会がありますが、

その最新の発表内容を見てみますと

・乳酸菌が免疫力をアップさせる
・手術後の感染症防御を抗菌薬のかわりに善玉菌とオリゴ糖で行う
・高脂肪食摂取に伴う肥満やメタボリックシンドロームなどの病気の発症と腸内フローラの関係
・飲み込んでしまった歯周病菌が腸内フローラを変化させ、その変化がメタボリックシンドロームに

影響を及ぼす
・腸内フローラと年齢、便通、性別、牛乳、飲酒、野菜、喫煙、BMI(体格指数)との

関連(3,000人以上の調査)
・心臓病患者に特徴的な腸内フローラの確認

 極度に偏った肉や卵中心の食事が、腸内環境を悪化させる

大きな要因であることは 知られていますが、それがヨーグルトで改善できた、

ということも改めて検証されたりしています。

 

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ご紹介したのはごくごく一部ですが、腸内フローラと病気の関係性の解明が

研究の最先端で様々に盛んに行われていることがわかると思います。

 

今後も腸内フローラ研究からは目が離せません。
腸内フローラを良好にすることが便秘や下痢を改善し、

健康に貢献することは明らかですから

我々は腸内快調を目指してしっかり生活習慣を管理しましょう。

 

 

月の友のドクターDの健康コラム 12

2015.06.08

 

なぜオリゴ糖はビフィズス菌を増やすのか?

 

先日お客様より質問をいただきました。

「なぜ乳果オリゴ糖は悪玉菌のエサになりづらく、

身体に良いビフィズス菌を選択的にふやすことが

できるのですか?」

 

オリゴ糖のようなビフィズス菌のエサになり、

腸内細菌の改善を促す物質にプレバイオティクスという名称がつけられ、

歴史的にも有用性が証明され、数種類のオリゴ糖が

トクホの素材として認められています。
ビフィズス菌がエサとするとはすなわち「資化」、

材料をビフィズス菌が代謝して栄養成分を生成することです。

ビフィズス菌はオリゴ糖をエサにすることで増殖していくだけでなく、

代謝産物として乳酸や酢酸などの有機物を生成します。

これらが増えると腸内は酸性になり、

アルカリ性の環境を好む大腸菌やウェルシュ菌などの増殖を抑えます。

 

代謝するためには酵素が必要で、そういったものを持ち、

種々のオリゴ糖を分解して増殖することができるのが

ビフィズス菌の特徴なのです。

悪玉菌には酵素がないのでオリゴ糖を資化して増殖することができません。

 

ビフィズス菌のエサとして効率的に働き、増やす物質、

オリゴ糖のようなものをビフィズス菌増殖因子と言います。

 

母乳で育てられている乳児の腸内では

出生後一週間以内に急速にビフィズス菌が優勢となり、

腸内に占める菌の中での割合は99%にまで達するといいます。

母乳中にはビフィズス菌を選択的に増殖させる因子があることがわかったのです。

そしてこのことは乳児期の感染防御の点でも重要で、

健康維持に重要な貢献をしています。

 

この母乳によるビフィズス菌の増殖効果は

母乳に含まれるオリゴ糖にあると考えられ、

オリゴ糖はビフィズス菌を増やす糖として

大きな注目を集めるようになり、研究が進められました。

オリゴ糖とは単糖が複数結合したものを指し、

植物に入っていたり、発酵食品(みそ、醤油など)に入っていたり、

自然界に存在しているものです。

ビフィズス菌を増殖させることを目的として、

多くの種類のオリゴ糖が開発され、食品に添加されたりして実用化されています。

乳果オリゴ糖(乳糖果糖オリゴ糖)は乳糖と果糖を

酵素反応でつなげてオリゴ糖にしたもので、

ビフィズス菌増殖の能力があって、糖質としても美味しいのが特徴です。

 

ビフィズス菌を増やすことがいかに私たちの健康に寄与するか、

科学的に解明されつつあります。

プレバイオティクス「オリゴ糖」を賢く利用しましょう。

 

 

参考文献
ビフィズス菌の特異的糖資化機能の解明と利用
熊谷英彦 浦上財団研究報告書 Vol.7 (1999)

ビフィズス菌のヒトミルクオリゴ糖分解に関わるホスホリラーゼの結晶構造
日高將文ほか PF NEWS Vol.27 No.2 (2009)

人の健康は腸内細菌で決まる! 光岡知足 技術評論社

 

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